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「親父の手術にどうしても必要なんだ…」
彼はぽつり、とそう言うと、缶のプルタブをネジ上げて空ける。
プシュッ、という小気味良い音が静かな公園に響く。
「主の親父殿の?」
「あぁ。
親父のやつ、重い病気になっちまったらしくてさ。今すぐ手術しないとヤバイって…。
だから、どうしても金が必要だったんだ…」
カラカラに渇いた喉にスポーツドリンクを流し込み、夜空を見上げる。
いくつもの星が瞬き、綺麗な円を描いた月が浮かんでいる。
なんとも美しい、澄んだ夜。
「絶対にするんだ……親孝行」
しかし。
こんな不正な行為で手にした大金で親孝行をしたとしても、きっと父親は喜ばない。
そんなのわかりきっている。
彼だってこんな方法の親孝行は嫌だった。
しかし何をやってもダメな自分には、この方法しかなかったのだ。
だから許してくれと、心の中で請い願う。
「ああ、もちろん手伝ってくれたお前にはしっかり取り分やるから。
そこら辺は心配すんなよ……ってどうした?」
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