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「しかし何故だ?
今の今まで、索敵は怠っていなかったと言うのに…」
素朴な疑問を、ぽつりと漏らす。
「悪いな、俺の死神はあんたとそもそもの出来が違うんだ。
存在を消すことくらい簡単でね……さて、疑問が解消できたところで、そろそろいいか?出来れば、大人しく消されてほしいんだけど」
少年の瞳が、街灯に照らされてぼんやり光る。
「お、おい…逃げようぜ!?
こんなのわざわざ相手にすることないって!」
「無理だ、主よ……奴等に狙われれば、逃げても追われ続けるだけだ。いや、逃げる前に仕留められるか……ならば、ここで応戦する!」
死神はそう言うと、体を深く沈める。
「リク」
「はい」
少年が、異形の名を口にした。
リクと呼ばれた異形の人物は、自分の身の丈以上に巨大な鎌を、軽々しく正面に構える。
月明かりが禍々しい鎌の刃を照らしつけ、眩しいくらいの、怪しい光を放つ。
ーーー美しい月夜の下、二体の死神が睨み合う。
互いに臨戦態勢となった双方の間に、緊迫した空気が流れる。
その現実離れした光景を見た青年の体に、まるで電流のような物が走る。
思わず、呼吸をすることすら忘れてしまう。
先に仕掛けたのは、薄汚れたローブの死神。
思い切り地面を蹴る足。
噴き出すような土煙。
僅か一歩。
たった一歩で、巨体が一瞬にしてリクに迫る。
「ッ!」
思わずといった感じに、リクから吐息が漏れる。
「ウオオオォォォォォォォォッ!!」
鼓膜をびりびりと突き刺すような怒声と共に、降り下ろされる大木を思わせるくらいに太い腕。
突風のように激しい衝撃と、再び立ち込める土煙。
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