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「だから私は不受理申出を取り下げない。私が心から【契約】したいと思える相手は、ここにはいないもの」
「葉月……でも、お父さんは」
母の言いかけた言葉を遮って、私は続ける。
「たとえお父さんが何を言おうと、私に何をしようと、私の意志は変わらないよ」
次の言葉を口に出そうとして、はっとして──それから思わずほほえんだ。
『自分の道はちゃんと選べる子だから、その手伝いをしてやっておくれ』
ああ、そうか。
お祖母ちゃんは、私がこう言えるように紺を遣わせてくれたんだ。
「私の伴侶も、契約も、未来も……『全部私自身が選ぶ』の」
寂しさに気弱になっていた心が燃え上がる。
私には紺がいる。その背景にはお祖母ちゃんがいる。
私が自分自身で選択を下すときに臆さないように。そのときの支えとなるように。
お祖母ちゃんが先見の明でありとあらゆる護りを与えてくれたことを、忘れちゃいけない。
大丈夫、私は無敵だ。
目を伏せて心の中のお祖母ちゃんに感謝したあと、私は母に対して挑戦的に笑いかけた。
「お母さん、私は負けないよ。お父さんとは……持久戦だね」
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