我が家の家政夫

4/19
前へ
/240ページ
次へ
昼休み、空き教室に入った私はお弁当箱のフタを開けた。 「とりあえず、焦げても生焼けでもないでしょう?」 「そりゃ、まあね……」 「おにぎりならね……」 どや顔をしてみせると、佳奈も栞も苦笑混じりにうなずいた。 私の本日のお弁当は梅とおかかのおにぎり。冒険はせず、安全な具をチョイスしている。 しいていうなら……ちょっとだけ不格好だけど。ちょっとだけ。 「でもさ、お米も満足に炊けなかった葉月がおにぎり握れるようになったんだから進歩よねー」 ふりかけがかかったご飯をお箸ですくいながら、佳奈が笑い、 「というか、18にもなってお米が炊けなかったって時点で衝撃だけど」 すかさず栞が突き刺した。本当のことだけど、心がイタい。 私には、お米を炊くはずだったのにおかゆをこしらえた前科があるのだ。 もう早く忘れてくれることを願いながら、笑ってごまかすほかない。
/240ページ

最初のコメントを投稿しよう!

250人が本棚に入れています
本棚に追加