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藤『あー……
その、初めに言っておくが……
俺はアンタらが連れてきた藤村 雨華だ。
……確かにフェンリルになったが、中身は変わってる。
アンタらが知ってる兄とは違う。
それはお前も解ってるだろ?…… “ヨルムンガンド” 』
ヘルの後方に視線だけ向けると、濃緑の髪のイケメンが何とも言えない表情で立っていた。
ヨル「もちろん分かってるよ。妹……ヘルだってね。
でも……
確かに変わってしまったかもしれないけど、フェンリルは僕らの兄には違いない。
藤村君には迷惑かも知れないけどね…。
神々との戦いが終わって、再びその姿を目に出来るなんて思えなかったんだ。
それだけで嬉しい……。
だから、もうそれで十分なんだ。」
うう……そう言いながら泣きそうな顔すんな!
俺は思わず視線を逸らす。
俺だってこう……複雑な気持ちなんだよ!
目の前の二人が、フェンリルに……俺にとって大切な奴らだって思える。
でも、これは俺のじゃなくてフェンリルの想いなんじゃないか?
今の俺がコイツらの兄だと名乗っていいのか?
俺が悶々と考えていると、靄が優しい声(?)で語りかけてきた。
「フェンリル様?
今の貴方がそう思っておいでなら、そう為さればよろしいと思います。
確かに変わってしまった事には間違いありません。
ですが、フェンリル様が感じていることとお二人の気持ちには何の隔たりも無い筈ですよ?」
俺は漂う靄をまじまじと見てしまう。
靄がイケメンだ……
すごく……格好いいです。
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