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辺りは夕焼けに照らされ、背の高いビルもコンビニもアスファルトの地面も茜色に染まっている。
次は~○○。次は~○○。
電車の窓から流れる景色をぼーっと眺めていると、いつの間にかもう自分が降りる駅に着くようだ。
学生鞄を肩にかけ直して、人の流れのままにホームに出る。
帰宅時間でがやがやと人が溢れる中、乗り換え待ちの広いホームので通過電車のアナウンスを聞き流す。
ドンッ!
「ぅお!?」
列の一番前にいた俺の体に、突然軽い衝撃がくる。
衝撃がきた方向を見る
そこには、夕方なのに泥酔しているDQN風のチャラい兄ちゃんが俺にぶつかった反動で転けていた。
「え?」
ただ人とぶつかっただけ。
よろけはしても健康な男子高校生の俺は踏ん張る位できる。
だが、何故かよろけた瞬間何かに背中を引っ張られた。
気が付けば、俺の足はホーム上に無かった。
自分の周りがゆっくりになったように感じる。
俺にぶつかった衝撃で倒れたまま、驚愕の表情でこちらを見るDQN風の兄ちゃん。
咄嗟に手で顔を覆うOLであろう若い女性。
読んでいた新聞から顔をあげた形で固まっているサラリーマンのオッサン。
突然の出来事すぎて頭がついていかない。
ただ感じるのは体の底から沸き上がった何とも言えない冷たさ。
直感でこれが “死” だと理解してしまう。
(うそだろ……)
そんな長いような一瞬の後、眩しいライトが視界の端に入ったかと思った瞬間に
俺の意識は消えた。
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