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それはさておき。
約四ヶ月ぶりの森野は前に見た時よりも髪が伸びていて、胸の下辺り、脇腹の少し上辺りにまで達していた。
「随分長くなったなぁ、髪の毛」
「うん。次の髪型の為に伸ばしてるからね」
ウェーブのかかった髪を撫でながら森野は言う。
「黒のロングストレートにするつもりなんだ」
「へぇ、そうなのか」
沸き上がってくるテンションを抑えながらも俺は応える。
黒のロングストレートと言えば俺の大好きな髪型じゃないか。
どれだけ好きかというと、もしも街中で黒髪ロングストレートの女性を見つけたらふとカルガモの子供よろしくついていってしまうくらい好き。
もしも仮にその長い髪が切られてしまった場合、その髪を拾って流しそうめんの台に流してずっと鑑賞しておきたいくらい好きなのだ。
まぁ高校生活三年間の間で森野にそのことを言ったことがあるのか正直覚えてないが、例え言ったとしても森野も忘れてるだろうし、多分たまたまだろう。
俺の好みに合わせたなんて、そんなことはないだろう。
「いやね、前々から憧れてたんだよね、黒のロングストレート。昌みたいになれるかなってさ」
昌みたいに、と最後にもう一度付け加えて言った。
今でこそ茶髪のショートパーマの昌だが、最初の頃は黒のロングストレートだったわけで、とても可愛かった。
まぁ中身は可愛いげもへったくれもなかったのだが。
「まぁ森野ならいけるよ、うん」
森野なら大和撫子系の美人になりそうだ。
「本当? ありがとう、屋久島君」
「いやいや」
別に礼を言われる程じゃないのだが、重い何かを感じたのは気のせいだろうか?
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