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「ありがとうございます!でも、知りませんでしたよ、『私』の姿で陛下と知り合っていたなんて!後宮入りできたのも、『私』が陛下に気に入られたからですよね!」
「…ま、まあそれは違うと…「ホンットーに、マルグリット様には感謝感激ですー!本当に後宮入りできちゃうなんて、夢のようです…もしかして、私のために陛下への好感度、上げたんですか?」
「いえ、だから好感度とかは関係な「あー!今から待ち遠しいなあ。あんな美しい人のお目にかかれるなんて!」
口元を引きつらせながらエイミィの話に相槌をうつものの、本人は全く聞いていないらしい。
頬に手を当てながら、ひたすら陛下に早く会いたい、と繰り返す。
だが、幸せの絶頂、といった具合に浮かれるエイミィとは裏腹に、マルグリットは複雑な心持ちだった。
―『なりかわり』はマルグリットの思い通り、終焉を迎えることになった。
エイミィもそれを了承し、「令嬢と下女がなりかわった」という秘密は誰にも知られないまま、守られそうである。
それだけであれば非常に喜ばしい事態なのだが、それと同じくして、今度は『エイミィの後宮入り』という問題が持ち上がり、マルグリットを悩ませる。
自慢ではないが、国王陛下とは少々―いや、かなり親密に接してきたマルグリット。
昼食時にひょっこり現れたり、下女の仕事中に出くわしたりと、
ありえないほどの遭遇率で陛下に会い、会話をしたり散歩をしたり。
むしろ後宮にいる側室たちよりも陛下と会っていたのではないか、とマルグリットは思う。
よって、いかに声や姿かたちが似通っていても、
エイミィが彼の知る『エイミィ』ではないと気付かれてしまうのではないか、とひやひやしているのだ。
――あの王様、勘は悪くなさそうだし。
「――ねえ、本当にいいの?エイミィ。」
「何が、ですか?」
マルグリットが恐る恐るエイミィに聞くと、エイミィはきょとんとした顔を作った。
現在、部屋の中にいるのはそっくりな外見の二人のみ。
ルビアは使用した茶器を片付けに行っていた。
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