エピローグ

5/6
1150人が本棚に入れています
本棚に追加
/201ページ
「―という訳だ、ユイン。午後の会議だが、私は少し遅れると伝えてくれ。マルグリットの方の予定も調節を頼む。」 「承りました。」 「分かりました。では仕事が残っておりますので、失礼しますね。」 と、王が命令を下すや否や、くるりと踵を返す二人。 ヴィルフリートとともに残されたマルグリットは、嫌な予感をひしひしと感じさあっと青ざめる。 「え!?ちょ、『という訳』ってどういう訳…ひゃあ!?」 「さて、私たちは少し話合うとするか。」 「は、話すことなんてありませ……って、どこ触ってるんですか!?」 「ほら、部屋に入ろう。ここは寒いだろう?」 や、もうこれいつもの展開だよ!? 話とか口実でしかないですよね陛下! という叫び声を無視し、ヴィルフリートは妻を抱いてさっさと部屋のドアを開けてしまう。 これはまずい!とじたばたと抵抗しながら、マルグリットは去りゆくエイミィに手を伸ばす。 「うわああん!助けてエイミィ!ちょっとでいいから『なりかわり』して!」 「あ、すいません無理です。」 「即答とか酷い!」 「王妃様付きの侍女であると同時に陛下の狗でもあるので。」 「えええ!?」 エイミィー!と叫ぶ声は無視し、エイミィはその場を後にした。 洗濯籠を抱え直し、せいぜいこってりと濃厚な時間をお過ごしください、と舌を出す。 ――いい加減、諦めたらいいのに。 マルグリット様が陛下に勝てる訳がないじゃないですか。 とは、思ってはいるが口にしないのである。 秋晴れの本日。 日の当たる回廊を通って目的地へと歩いている途中、 前から茶色の髪を几帳面に結った女性が歩いてくるのを見、エイミィは足を止めた。 向こうもこちらに気付いたようだ。 女性は正面まで来て立ち止まった。 「ルビアさん。」 「エイミィ、仕事の方はいかがですか?」 「はい、これを洗濯場まで持っていけばひと段落です。」 「そうですか。」 そう言って少し黙った侍女ルビアは、ふうと物憂げに息をもらした後、また口を開いた。 .
/201ページ

最初のコメントを投稿しよう!