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「―という訳だ、ユイン。午後の会議だが、私は少し遅れると伝えてくれ。マルグリットの方の予定も調節を頼む。」
「承りました。」
「分かりました。では仕事が残っておりますので、失礼しますね。」
と、王が命令を下すや否や、くるりと踵を返す二人。
ヴィルフリートとともに残されたマルグリットは、嫌な予感をひしひしと感じさあっと青ざめる。
「え!?ちょ、『という訳』ってどういう訳…ひゃあ!?」
「さて、私たちは少し話合うとするか。」
「は、話すことなんてありませ……って、どこ触ってるんですか!?」
「ほら、部屋に入ろう。ここは寒いだろう?」
や、もうこれいつもの展開だよ!?
話とか口実でしかないですよね陛下!
という叫び声を無視し、ヴィルフリートは妻を抱いてさっさと部屋のドアを開けてしまう。
これはまずい!とじたばたと抵抗しながら、マルグリットは去りゆくエイミィに手を伸ばす。
「うわああん!助けてエイミィ!ちょっとでいいから『なりかわり』して!」
「あ、すいません無理です。」
「即答とか酷い!」
「王妃様付きの侍女であると同時に陛下の狗でもあるので。」
「えええ!?」
エイミィー!と叫ぶ声は無視し、エイミィはその場を後にした。
洗濯籠を抱え直し、せいぜいこってりと濃厚な時間をお過ごしください、と舌を出す。
――いい加減、諦めたらいいのに。
マルグリット様が陛下に勝てる訳がないじゃないですか。
とは、思ってはいるが口にしないのである。
秋晴れの本日。
日の当たる回廊を通って目的地へと歩いている途中、
前から茶色の髪を几帳面に結った女性が歩いてくるのを見、エイミィは足を止めた。
向こうもこちらに気付いたようだ。
女性は正面まで来て立ち止まった。
「ルビアさん。」
「エイミィ、仕事の方はいかがですか?」
「はい、これを洗濯場まで持っていけばひと段落です。」
「そうですか。」
そう言って少し黙った侍女ルビアは、ふうと物憂げに息をもらした後、また口を開いた。
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