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それからの王の行動は早かった。
自身が偽物だと見破った『エイミィ』を牢に送り、その日から調査官に言付け、事情聴取―と言う名の尋問―を行った。
ただ、未だ『下女』の正体や動機が不明であったため、表向きには何事もなかったかのように、
つまり『エイミィ』はそのまま後宮にいるかのごとく処理された。
牢に入れる際、彼女は陛下、と泣き叫びながらかなりの抵抗を示したようだが、そのようなことはどうでもいい。
彼は『本物』のエイミィにしか興味がなかった。
―ヴィルフリートは確信を持っていた。
おそらくあの者は本物のエイミィと入れ替わり、後宮にまんまと入りこんだコソ泥の鼠であると。
彼の愛する本物の『エイミィ』を何処かへ隠した悪人であると――。
だが、真実は彼の考えとは全くの逆であった。
「――なんだと?」
ヴィルフリートは思わず声をあげた。
その剣幕に気圧されながらも、側近は淡々と言を繰り返した。
「ですから、ただいま牢にいる『エイミィ』は本物の下女エイミィであるということが判明いたしました。」
がたり、と机が揺れ花瓶の水がこぼれる。
王が勢いよく立ち上がり、傍に立つ側近に掴みかかったのだ。
彼が冷静を欠いている様は誰が見てもとれた。
「馬鹿な、そんなはずはない!」
「残念ですが、事実です。先程、城下から彼女の両親を呼び、彼女が本物であることを確認いたしました。また、同時に連れてきた近隣の者も彼女が『春先から城で働く下女、エイミィ』であると証言しています。」
両親はともかく、ただの一般市民に彼女をかばう理由はありません。
ユインは冷静な声でそう目の前の主に告げた。
その手の調書をひったくるように奪い、目を通すヴィルフリート。
そして書かれていた内容―目の当たりにした真実に愕然とした。
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