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「嫌に動きが早いな。元からの密通者でもいるんじゃないか?」
「その可能性もあり得ますが、今のところよく分かっておりません。」
「そうか。」
「ああ、詰所に潜伏していた間者たち、計6名は全員牢に入れております。調書はこちらに。」
「御苦労。」
書類の束を受け取って目を通す国王をちらりと横目で見る。
しばらくして、ユインは自然なタイミングで質問を投げかけた。
「それにしても陛下。よく分かりましたね?あの兵士が間者だと。当人も驚いていましたよ。」
「…まあ、な。」
するとヴィルフリートは喉を鳴らして笑った。
それを見て、やはりご機嫌のようだな、とユインは思う。
何かよいことが起こったのには間違いないらしい。
このように楽しそうにしている王を見るのは、即位後初めてかもしれない。
何が起こったのか非常に気になるところだ。
どうにかして聞きだせないだろうか…
「ただ者ではない、とは薄々感づいていたが…」
ユインが思考に身を投じていると、ヴィルフリートはそうぽつりと呟いた。
途端に我に返ったユインは、未だ真剣に書類をめくっている王を振り返った。
「?なんのことですか?」
「いや、そろそろお前にも紹介してやろうと思って、な。」
「…は?」
主の言の意図が掴めず怪訝そうな顔を作る側近。
ヴィルフリートはさらりと銀髪を揺らし、顔を上げた。
「午後に茶会を開くぞ。用意を頼む。」
そう命を下した王は、至極楽しげな表情をしていたという。
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