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「あ、あの……陛下?」
「どうした?遠慮なく食え。お前のために用意したものだぞ。」
「いえ、そうではなくて…」
マルグリットは、顔面蒼白になっていた。
只今の状況を把握することを脳が拒否するように、混乱状態が抜けない。
ああ、なんだか眩暈がしてきた。
目の前にはがっしりとした大きなテーブル、その上に色とりどりのお菓子やよい香りのたちこめるティーカップ。
テーブルをはさんで向かい側には、相変わらず煌びやかな衣裳をまとった麗しい陛下。
――なに、これ。
誰がこのようなことを予想しただろう。
マルグリットはいますぐこの場から立ち去りたい気分でいっぱいであった。
エイミィという下女はいるか、と問われたのはちょうど昼休憩のときだった。
いつもは騒がしい食堂の中は途端にしん、と静まり、
全員が一斉に一人の少女の方に視線を向ける。
『エイミィ』もパスタを口に運ぶ手をぴたりと止めて、伝令役の男を見た。
―な、何!?何の用!?
嫌な予感しかしない。
何か仕事でミスでもあったんだろうか?とびくびく震えるマルグリット。
そんな下女いませんよーと言いたいところだったが、
同僚たちにせっつかれ、あっけなく前に出される。
がっしりとした体格の男はじろりと下女を見下した。
「お前がエイミィか。」
「そうですが…あの、何の御用でしょう?」
「国王陛下がお呼びだ。同行してもらおう。」
「――!!」
――いや、それなら仕事の失敗を指摘された方が何倍もマシだった!!
と、マルグリットは一瞬で思った。
周囲からの視線がいっそう自分に突き刺さってくるのが分かる。
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