午後の茶会

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「陛下!?陛下っていったよね、今!?」 「え、何。あの下女、何者?」 「あれよ、きっと何か大事なものを壊しちゃったのよ、あの子。…気の毒に。」 「あれ?物品破損報告なんて、きてました?」 「何にせよ、うらやましいー!」 そんな声があちこちからあがる。下女は汗だくでその言葉を聞いていた。 ――もうやめて、私を放っておいて!! というか、マジで何の用なんですか陛下! ―と、心の中でわーわーと騒ぐマルグリットだったが、元々ただの下女が国王の『勅命』に逆らえるはずもなく。 結局、ガチムチなオニーサンに誘導され、陛下のもとまで連れてこられたのだった。 ――そして、現在。 やたらゴージャスなテーブルセットの前に座らされたマルグリットは、がくがくと震えていた。 道中考えていたが、やはり自分が連れてこられた理由などひとつしか思い至らなかった。 すなわち、 リートルード国王陛下に対する数々の無礼な行動、そして粗相。 それを咎められるのだ。 目の前の菓子やら紅茶やらはおそらくフェイクだ。 きっと最後の晩餐のつもりなのだろう。 憎らしいほど粋な演出をしてくれる、とマルグリットは乾いた笑いをもらした。 「…どうした?エイミィ。」 一点を見つめたまま微動だにしない下女を見て、王は再度下女に問いかける。 ―いえ、どうしたもなにも。 マルグリットは絶望的な心持ちで顔を上げた。 「私、何かやらかしてしまったのでしょうか…」 「やらかし…まあ、そうだな。」 「―!」 下女はさらに顔色を悪くした。 不安定にふらふらと体が揺れる。 その様子が可笑しかったのか、王は楽しげに瞳を揺らした。 .
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