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彼らの足音が段々遠くなっていき、室内には国王と狼狽している侍女や下男たち、そして、依然としてつっ立ったままの赤毛の下女が残された。
マルグリットは後は彼らにまかせればいいだろう、と思い、また陛下の方へ顔を向けた。
「…陛下、私は仕事に戻りますね。せっかくのお茶会でしたが、このようなことが起こり、非常に残念に思います。それでは――」
「―待て、エイミィ!」
退出の常套句を並び立て、さっさと部屋を出ようとする下女を王は呼びとめた。
『エイミィ』は赤毛の髪をかすかに揺らしながら王を仰ぎ見る。
「…なんでしょう。」
「お前は…何者なんだ?」
誰もが問いたかった質問。
それをヴィルフリートが口にすると、周囲は水を打ったように静かになり、彼らを見守った。
―が、下女はふっと口元に笑みを浮かべ、
「私は、ただの下女ですよ。」
何でもないことのようにそう呟いた。
優雅に一礼をした赤毛の下女はそのまま部屋を後にしたが、
残された誰もが呆気にとられてその場を動けなかった。
だから、気付いた者はいなかった。
――下女が扉を閉めるなり、廊下を全速力で駆け戻って行ったことなど。
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