侍女と令嬢の攻防戦

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********** 「そんなに下女がお好きなら、本当に下女になってしまえばよろしいのでは?」 「………。」 マルグリットが息せき切らして『ウェリントン侯爵令嬢』の自室に戻った途端、 中にいた女性にそう嫌味を言われた。 黒髪に、緑の瞳。 鮮やかなブルーのドレスに身を包んだその女性は、まさしくマルグリット・セシーリア・ウェリントン侯爵令嬢―― ではなく、その偽物のエイミィだ。 自信たっぷりにその唇をゆがめ、赤毛の下女にほほ笑みかける。 しかし、その瞳は鋭く下女を睨みつけていた。 「随分と、下女の仕事を楽しんでいるようじゃないですか。同僚たちにも聞きましたよ、仕事熱心だと。」 「…まあ、それはどうもありがとう。」 「ええ。『私』の評価も上がるばかりですし、本当に感謝してます。そして、こちらの――『マルグリット様』の評価も、ぐんぐん上昇中ですよ。」 「そうなの?ルビア。」 マルグリットは侍女のルビアに問いかける。 するとルビアは少々言いにくそうに答えた。 「…はい、『マルグリットお嬢様』は、毎日のように茶会に出かけ、流行の装飾品をいくつもお買い求めになってはそれをつけ、他の側室の皆さまと親睦を深めていらっしゃいます。」 「ああ、そうなの。すごいわ、エイミィ。」 「まあ、貴女とは気の入りようが違いますもの。」 ふん、と鼻を鳴らすエイミィに、マルグリットは素直に感心した。 話し方もまるで貴族のようだ。 おそらく、彼女なりにかなりの努力をしたに違いない。 だがその反応が気に食わなかったのか、 エイミィはぴくりと眉を不快気に動かし、マルグリットを見下したように嘲笑った。 .
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