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「そりゃ、そうよ。お考えも意図もなしにエイミィを後宮に入れるわけがないじゃない。」
「お嬢様は何故か分かるのですか?」
「決まってるでしょ?『エイミィ』の監視よ。」
「監視、ですか?」
マルグリットはこくりと頷いた。
エイミィの後宮入りが本当のことだとしたら、と考えマルグリットが最初に思いついた理由がそれだった。
先の『茶会事件』で(偶然に)毒を見抜いた下女。
それはよい意味でも悪い意味でも、存分に注目を浴びただろう。
そして何をトチ狂ったか、『ただの下女です』なんて言いながらその場から逃げ出したのだから、まあ怪しさ満点。
むしろ毒を入れた犯人と関係があるのでは、と疑われても仕方がない。
…実際、フロリアンにもそう言われたわけだし。
――ああ、今考えても非常に悔やまれる。
何であんなことをしてしまったのだろう、とマルグリットは過去の自分を絞め殺したい気分になった。
まあとにかくそういう訳で。
下女エイミィをどうにかして確保し、その正体を突き止めたいがため、
というのが最も有力で納得のいく理由であった。
「はあ…ならば陛下は、怪しい行動をとった『エイミィ』を見張るために今回のことを。」
「ま、そう考えるのが普通でしょうね。あとは…希望的観測で言えば、安全確保とか。」
「エイミィの命を守るため、ですか?」
「そう。後宮はこのお城で一番安全だわ。自由に出入りできる男性は陛下だけだし、入口には何人もの兵士がいるし、傍には侍女も控えているわけだし。外部からこっそり命を狙うのは相当難しいはず。」
「成る程…」
意を得た、といった風に頷くルビア。
そこまで話してマルグリットははあ、と息をついた。
まあ、理にはかなっているのだ――ここまでは。
「しかし…駄策にも程があるわ。」
「…お嬢様、陛下の御決定ですよ?そこまで言わなくても。」
「だってエイミィは爵位も後ろ盾もない、一般庶民よ?それを…監視兼保護目的とは言え、いきなり後宮につっこむなんて何考えてるのよ、陛下は。」
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