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「トリック・オア・トリート!!」 彼女が予想通りの言葉を掛けながら扉を叩くと、待っていたかのように、しかしゆっくりと扉が開いた。 きっとお菓子の入った籠を持った誰かが出てくるのだろう。そう思いながら見ていたが、扉は開いただけで、誰も出てくる気配がない。 僕は不思議に思い、彼女に視線を移した。しかし彼女は気にする風もなく、そして、然もそうするのが普通であるかのように、開いた扉から中に入って行ってしまった。 僕は慌ててその手を掴み、彼女を止める。そんな僕を不思議そうに見つめる彼女に、 「ダメだよ、勝手に入っちゃ!」 そう言うと、 「良いのよ」 にっこり笑って答える。 もしかすると、この家の人から許可を貰っているのかも知れない。これまでの彼女の行動に悪びれる素振りはなく、此処に来るまでの足取りも迷いは見られなかった。 彼女のサプライズに、この家の人も一枚噛んでいる可能性も高い。 そこまで考えて、漸く僕は彼女の後から、家の中に入ったのだった。
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