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-まんげつのよる-
壁といわず窓枠といわず、およそ絡み付けそうな箇所は全て蔦が這い、更に、其処を取り囲む立木の枝が覆い被さっていて、其れが建物であるとは、遠目には分からないだろう。
些かファンタジックな言い方をするなら、森の妖達が意図的にカムフラージュを施した聖域…とでもいうか。
仮に、精緻な地図を渡されたとして、簡単に訪ねて来られるような場所とは、思えない。
かつて、虎狩りの際、偶々発見された密林の遺跡のように、なにかしらの偶然で迷い込むかでもしない限り、辿り着けない。
それほどにひっそりと忍び隠された佇まい。
誇張では、ない。実際、私がそうだったのだ。
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