一通のメール

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「アニィ!ほら、起きて!朝だよ!」 お淑やかとは少し無縁な、元気一杯ですという少女の声が、ベッドで惰眠を貪る少年、高原秀一の耳に飛び込んで来る。 「……ンあ?子鹿?」 秀一は重いまぶたを開き、声のした方へ目を向ける。 そこには、目も覚める絶世の美少女……では無く、いつも見慣れた秀一の妹、高原子鹿が、にこやかに立っていた。 高原子鹿。 今年で小学四年生になる、満十歳の少女である。 彼女を言い表すなら、元気の一言に尽きるだろう。 運動が大好きで、陸上クラブに所属し、短距離走を専門としている。 兄である秀一と違い、とにかく身体を動かす事が好きで、 「インドア?何それ?新しい建築方式か何か?」 という言葉を口にしそうな少女が、高原子鹿という少女である。 ちなみに、兄である秀一の事はアニィと呼ぶ。 「ほら!早く起きないと、学校へ遅刻しちゃうよ!」 元気一杯な、秀一から言わせればやかましい妹の声が、寝起きの秀一に届く。
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