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秀一は着替えを終えて、一階のリビングへと足を運んだ。
リビングには、一足先に朝食を口にしている両親と妹が、テーブルを囲んで座っていた。
「秀一か?おはよう」
リビングに入ってきた秀一に気付いた壮年の男性、高原家の大黒柱であるところの高原九郎が、新聞から顔を上げて言葉をかける。
「おはよう父さん」
「うん」
九郎はそれだけ会話を交わすと、また新聞へと顔を向けた。
秀一は別段気にした風でも無く、テーブルの空いている席に腰を下ろした。
九郎が口下手な為、割とこんな感じなのだ。
そして、九郎の丁度真向かいに座る女性、高原家の専業主婦であるところの高原鶴子が、食後のお茶をすすりながら秀一に話しかける。
「おはよう秀一」
「おはよう母さん」
「朝ご飯はどっちを食べる?」
「あ…うん。じゃあ……」
「今日はね~。食パンと菓子パンとナンの各種を取り揃えてます」
少々お茶目な女性であった。
「……うん。……うん?各種も無くね?うんざりするほどパンしか無くね?」
「お味噌汁の具は大根とワカメよ」
「味噌汁!?パンなのに!?せめてコーヒーをいただけませんかね!?」
「はいはい、じゃあコーヒーとお味噌汁を持ってくるからね~」
そう言って、台所の方に向かった母親の姿を横目に見やり、秀一は盛大なため息をついた。
結局秀一の朝食は、トーストに目玉焼き、コーヒーと味噌汁(中身は大根とワカメ)という内容になった。
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