一通のメール

6/18
前へ
/106ページ
次へ
秀一は着替えを終えて、一階のリビングへと足を運んだ。 リビングには、一足先に朝食を口にしている両親と妹が、テーブルを囲んで座っていた。 「秀一か?おはよう」 リビングに入ってきた秀一に気付いた壮年の男性、高原家の大黒柱であるところの高原九郎が、新聞から顔を上げて言葉をかける。 「おはよう父さん」 「うん」 九郎はそれだけ会話を交わすと、また新聞へと顔を向けた。 秀一は別段気にした風でも無く、テーブルの空いている席に腰を下ろした。 九郎が口下手な為、割とこんな感じなのだ。 そして、九郎の丁度真向かいに座る女性、高原家の専業主婦であるところの高原鶴子が、食後のお茶をすすりながら秀一に話しかける。 「おはよう秀一」 「おはよう母さん」 「朝ご飯はどっちを食べる?」 「あ…うん。じゃあ……」 「今日はね~。食パンと菓子パンとナンの各種を取り揃えてます」 少々お茶目な女性であった。 「……うん。……うん?各種も無くね?うんざりするほどパンしか無くね?」 「お味噌汁の具は大根とワカメよ」 「味噌汁!?パンなのに!?せめてコーヒーをいただけませんかね!?」 「はいはい、じゃあコーヒーとお味噌汁を持ってくるからね~」 そう言って、台所の方に向かった母親の姿を横目に見やり、秀一は盛大なため息をついた。 結局秀一の朝食は、トーストに目玉焼き、コーヒーと味噌汁(中身は大根とワカメ)という内容になった。
/106ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加