一通のメール

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『今日の特集ニュースは、最近問題になっている行方不明事件について……』 朝食を済ませた秀一の耳に、女性ニュースキャスターの声が飛び込んでくる。 テレビの方を向くと、行方不明事件について専門家らしい大人達があれこれと議論を交わしていた。 行方不明事件。 主に十代から三十代の男女を対象に起こっている事件である。 事件の概要としては、読んで字の如く、忽然と人がいなくなる。 原因や理由が不明で、被害者の因果関係も全く無い。 ネット等では『神隠し』や『拉致』が囁かれているが、噂の域を出ない。 ニュース番組に出演しているどこかの評論家らしいおばさんが『家出とは、現代の社会問題で……』とか言っている。 秀一は父の方に顔を向けると、九郎は新聞から顔を上げた。 「……家出では無い」 そう呟くと、コーヒーに手を伸ばし、コーヒーを口にする。 高原九郎の職業は警察官で、主に鑑識を専門としている。 「根拠は?」 秀一が聞くと、九郎は静かに言葉を紡いだ。 「家出という証拠だな……。本来、家出をするにはそれなりの理由があるものだ。だが、この事件の被害者に関しては、家出の可能性が極めて低い。被害者の中には、一人暮らしの人間もいるんだ。失踪や蒸発、拉致の可能性もあるが、それも極めて低いな…」 秀一の知っているだけでも、行方不明者の数は百人に達する。 それだけの人間が家出とは、いくら何でも考えられない。 「秀一。お前の学校の生徒も被害者の中にいるが、何か知っている事は無いか?」 「……ん~、学年が違うし、接点も無いからなぁ……」 「そうか……」 さして残念な風でも無く、九郎は話を打ち切り、新聞へ目を落とした。
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