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(中村陽子?……何で山本と?)
学年でも指折りの美少女と、男子生徒からもてはやされている中村陽子。
片や、言い方は悪いがイケメンと言い難い山本とのツーショットに、秀一は強い違和感を感じた。
いけない事と知りつつ、秀一は二人の会話に隠れて聞き耳を立てた。
「山本君。メールの内容見てくれた?」
「うん。……でも、中村さん。あのメールの中身は本当の事なの?」
「……もちろんよ。私が山本君に嘘をつくメリットなんか無いでしょう?」
「そう…かな?……そうだね。うん。確かに」
「そうそう。だから、今日の放課後にでもやってみて?きっと気に入ると思うな」
(気に入る?メール?何の事だ?)
秀一は頭を捻りつつ、二人に気づかれない様にその場を離れた。
そして、その日の教室での事。
楽しくない授業が終わり、だらけた空気が蔓延している教室の窓際に、秀一の席はあった。
秀一の席の前に座る友人長谷川直人が、死んだ魚のような濁った目を向けながら秀一に話しかける。
「高原ー何ぞ面白い話無いか?特にお前が不幸になる話とかが良いんだけど」
「ああ?面白い話?面白い顔だったら目の前にあるけど?」
「ハハハ!確かに、高原の顔は愉快な顔だよな!」
「いや?お前の顔だ。長谷川」
「………」
「………」
少しばかりの沈黙。
「やんのか!?ああ!?」
「上等だコラ!?」
二人は互いの胸ぐらを掴んだ。
実に仲の良い二人である。
しばらく睨み合った後、お互いに手を離し、会話を再開させる。
「……面白い話かどうかはわからないけど、気になった事なら今朝あったぞ」
「お?何があった?」
秀一の話に長谷川が食いつく。
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