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「起立、礼!」
『さようならー』
担任の返事を聞くと、俺は廊下に出て、立て掛けてある太刀袋を取り、足早に階段に向かった
「刀志!」
「……何だよ」
呼ばれた声に嫌な予感――いや、確信を持って振り向くと、茶髪のあどけなさの残るイケメンが立っていた
五十嵐灰斗(イガラシ カイト)
俺と同じ高1で幼なじみ。そして、最も俺が嫌いな奴だ
「一緒にかえ」
「黙れ、消え失せろ。竹刀見て分からねえのか」
「……悪ぃ」
灰斗はガクッ、と肩を落とした
最近密かに携帯小説にハマり、そこで『主人公体質』という言葉を覚えた
主人公体質――運動神経抜群で、変に正義感をもってて、自然にハーレムが出来るというムカつく体質
意味を知ったときはびっくりしたね
ソイツを持ってる奴が目の前にいるんだから
でもまぁ、俺がコイツを嫌っている最大の理由はそんなつまらん理由じゃねぇけど――
「ゴフゥッ!?」
俺の腹に拳小の何かが衝突した。だけど前には誰もいない
「言い過ぎじゃないかしら」
下を見ると、薄紫色の髪のロリコン共に好かれそうな女子が、俺の腹に拳をめり込ませていた
「てめぇか……ちんちくり」
ドスッ!
再度めり込む拳。くの字に曲がる俺の体。クソッ、その小さい体の何処にそんな力があるんだ?
「伊月叶(イヅキ カナエ)だと、何回言えば分かるかしら……巨人」
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