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いや…………違う…。
俺が、命の重みという真実を知ったことが。
その真実だけが、恐ろしく怖い。
今初めて知ったことが。
その真実が今俺の前にあることが。
どうして今まで気づかなかったのだろう。
どうして今気づいたのだろう。
どうして今まで気づこうとしなかったのだろう。
答えはない。
答えはないのだ。
俺に答えを知る権利はない。
そんなことなんて、人間にはわからない。
人間には。
………人間には。
俺も人間なんだ。
人間の俺が人間を……人間の命を奪ったのだ。
嗚呼、そんなこと………そんな大切なこと、どうして俺は気づくのが遅いのだろう。
もう遅いのだ。
いつの間にかそんな俺を雨は打っていた。
俺が殺した者たちの涙とともに。
彼らの涙が俺を打つ。
俺は、俺のしたことは悲しみを生んだ。
そしてこの先憎しみと恨みが生まれるだろう。
その前に、俺はこの世から消えよう。
最後まで殺人者として………。
こうして俺の胸は赤い涙を流し、俺は息をしなくなっていった。
end
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