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確かに莉緒の周りにはいつも人がいた。
莉緒はみんなに慕われ、アドバイスしたりもらったりと、最初に会った時よりも断然演技が上手くなっていた。
「頑張ろうね」と励ましあって毎回目標を決めて努力してくる。
みんなで話して成果を披露したり、ダメなところを直してもらったり。
そうやって莉緒は確実に成長していた。
それに比べて俺は、何一つ成長できていない。
毎回同じことを繰り返しているだけだ。
誰にも相談しないから、わからないことはわからない。
新しいことは自分だけで見つけなければならなかった。
莉緒は1人分じゃなくて、大人数分の知恵があるんだ。
声優に必要なのは演技力だけじゃない。
笑顔と人間性。
たくさんの人を楽しませる能力も必要なんだ。
それを身につけることによって、演技にも磨きがかかる。
俺も変わろうかな。
でも、変われるかな……?
「……ふっ…」
考えているうちについ笑みがこぼれた。
「あれ、初めて笑った…?」
「え、あ、いや…。笑ってねぇよ!!」
「うっそ、絶対笑った!『ふっ』て」
「あ、おまっ……真似するなよっ」
真似されて睨んで莉緒を見た。
おもしろそうに笑う莉緒を見ると、「大丈夫、できるよ」と言われているように思えた。
不思議だ。
今まで他人を遠ざけていた俺だが、こいつを見てるとたくさん話したくなる。
……これも、一歩成長したことになるのかな?
ありがとな、莉緒。
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