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 触るな。やめろ、助けてくれ。おい、寝てる場合じゃないだろ。なあ、おい、頼む、起きてくれよ! 「ここかいな、ここかいな、わしの首はここかいな」  腹辺りを撫でられた。寝袋の上だというのに、はっきりと冷たいのが判る。  それはやがて心臓の上を触れた。その時だけ、長く長く触られていた気がする。  鎖骨辺りを撫でた。首はもう間もなくだ。ひたすらに恐ろしくて、涙が出そうなのになにもでない。身動き一つ取れない。  そっと、冷たい手が首に触れた。 「ここかいな、ここかいな、わしの首はここかいな」  二つの手が遠慮なく俺の首を触り続ける。長く長く、まるで吟味するかのように。 「ここじゃいな、ここじゃいな。わしの首はここじゃいな」  首に痛みが走った。体が動かない。まるで、鉛にでもなったかのようだ。  首が上に持ち上げられようとしているのに、体はそこに吸い付いたかのように動きはしなかった。  痛い。痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!  無理矢理首が引っ張られ、想像出来なかった程の痛みが走る。  やめろ、やめて、助けて。やめて、やめて、やめて、やめて、助けて、痛い、痛い、助けて!  声は出ない。身動きもとれない。 「ここかいな、ここじゃいな。これかいな、これかいな。 ――わしの首は、これじゃいな」  何かが切れた。生涯感じたことのない激痛だった。  叫びたい。俺の全身から悲鳴が上がった。それでも、体は動くことがなかった。  何かが外れた。また何かが切れた。もう痛みは感じない。また切れた。また、切れた。今度は、連続で切れた。  まるで雑草を引き抜いた時に、根をまとめて引っ張るように、嫌な音を立てて千切れていく。  口に生温かい液体が溢れた。味は分からない。もう、なにも分からない。 「わしの首はこれじゃいな。わしの首はこれじゃいな。わしの首はこれじゃいな」  やっと目が開く。  血にまみれた地蔵が、俺の首を掴んでいた。頭はないのに、笑ってみえた。  大きく引きちぎるような音を最後に、俺の世界は閉じられた。もう何も、感じない。
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