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「まあ、まあ、まあ。話は最後まで聴いてくれ」
「終わってなかったのか」
「ああ。なんでそんな話が生まれたかって、実際乗ってたからだよ。その地蔵のざらざらした首の上に、本当にどこぞの誰かの首がな」
「さすがに嘘だろう」
友人は首を振り、にやりと微笑む。
「二年前、本当にあったんだ。血塗れの地蔵の上に、これでもかってくらい苦しそうな男の首が。
見つけたのは俺達みたいな登山客だそうだ。もちろん警察に連絡して、その首はちゃんと元の持ち主のところへ帰った訳だが――奇妙なのはここからだ。
警察が調べたところ、首は無理矢理引きちぎられたようだってんだ。なにか凄い力で、な。
だが犯人の証拠となるものはなにもなし。おかしいだろ? いくらなんでも、証拠もなしにそんなことが出来る訳がない。
目撃者もいないってんで、警察は随分参ってたらしいぜ。で、今話題のもんがあれだ」
友人の指先に、首のない地蔵が木々の間にひっそりと置かれていた。頭がどう取れたのかは分からないが、首は多少の名残を残してほぼ平になっている。
話を聴いていたせいか、少し怖かった。不気味であるし、なにより本当に血の後らしいものが残っていたのだ。
地蔵の体に、うっすらと血が滴ったらしい跡が見える。それは歩いて近寄るほどによく分かった。
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