3/10
前へ
/10ページ
次へ
「まあ、まあ、まあ。話は最後まで聴いてくれ」 「終わってなかったのか」 「ああ。なんでそんな話が生まれたかって、実際乗ってたからだよ。その地蔵のざらざらした首の上に、本当にどこぞの誰かの首がな」 「さすがに嘘だろう」  友人は首を振り、にやりと微笑む。 「二年前、本当にあったんだ。血塗れの地蔵の上に、これでもかってくらい苦しそうな男の首が。 見つけたのは俺達みたいな登山客だそうだ。もちろん警察に連絡して、その首はちゃんと元の持ち主のところへ帰った訳だが――奇妙なのはここからだ。 警察が調べたところ、首は無理矢理引きちぎられたようだってんだ。なにか凄い力で、な。 だが犯人の証拠となるものはなにもなし。おかしいだろ? いくらなんでも、証拠もなしにそんなことが出来る訳がない。 目撃者もいないってんで、警察は随分参ってたらしいぜ。で、今話題のもんがあれだ」  友人の指先に、首のない地蔵が木々の間にひっそりと置かれていた。頭がどう取れたのかは分からないが、首は多少の名残を残してほぼ平になっている。  話を聴いていたせいか、少し怖かった。不気味であるし、なにより本当に血の後らしいものが残っていたのだ。  地蔵の体に、うっすらと血が滴ったらしい跡が見える。それは歩いて近寄るほどによく分かった。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

205人が本棚に入れています
本棚に追加