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「おい! 山を下りないのか」 「この山の頂上に、小屋があるんだよ。一度登ったことがある俺が言うんだ。間違いない」  確証があるのか。それなら今から山を下りるより、このまま登った方が雨に濡れずに済みそうだな。  猛烈な勢いで、俺達は雨に襲われる。風も加わり、中々酷いことになってきた。  俺は友人の跡に続いた。彼は勇んで登山道を突き進む。そのままいくらか歩き続けると、やがて木造の古めかしい小屋が見えてくる。  山頂はまだだが、間もなくではある。まあ、こいつが言う通り大体頂上だな。  友人と一緒に、その四畳程度の小屋の中に駆け込んだ。中は何もなく殺風景だが、中心の床がぽっかりと空いていて、焚き火の跡がある 「ふう、古いことは間違いないが、なんとか平気そうだな」 「ああ。これ以上酷くならなければいいんだが」  小屋が軋む。だがそれだけで、雨風を完全に防いでくれている。  俺達の願いとは裏腹に、雨風は弱まることを知らない。変わらず勢いを保ったままだ。 「参ったぜ。こりゃあどうしようもないな」 「寝袋を出しておこうか」  さすがに携帯電話は圏外で、使い物にならない。背負っていた重い荷物を下ろして、中から寝袋を引っ張り出した。  ここで眠らなければならない。それはあまり好ましいことではないけれど、そうする以外に選択肢がない。
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