6/10
前へ
/10ページ
次へ
 友人と語り続けた。しかし、夜が来訪しようとしても雨は依然強い。風はもっと強くなった。  山を下りることが出来ない。焦りが募る。だが、急くばかりの気持ちをどうにか押さえ付けて、明日に備える。  小屋が壊れそうな音を立てた。その度に反応してしまって、精神が疲れてきているのを感じる。  寝袋にくるまっても、中々寝付けない。友人はなんら感じないのか、爆睡しているから腹ただしい。  やはり寒い。寝袋から出した顔だけが、外から染み出す冷気によって熱を奪われていく。  ああ、早く寝よう。そうすればこんな音も冷たさだって気にならなくなるさ。  目を閉じる。明かりのない暗がりによって、瞼の裏は黒一色に染まっていた。  風の音が耳障りだ。ついでに、友人のいびきが堪らなく五月蝿い。  眠れないか。もう少し目を閉じていよう。すぐに寝れるさ、きっと。  床が固くてとても寝心地が悪い。なんでこいつはいびきをかくだけ熟睡出来るのやら。  恨みがましく睨んでも、奴は全く気にもとめない。どこから出しているのか、野太い声を放ちながら眠り続けている。  やれやれ、こいつに誘われなければ登山なんて来なかった。今ごろは使い慣れたベッドの上だったろうに。激しい後悔が俺を襲う。  風と雨が猛る。小屋が壊れるのではないか。そんな不安が過った。  
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

205人が本棚に入れています
本棚に追加