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 店内をさ迷っていた私の目線は、カウンター中央に座る、二人連れの男の一人で止まった。  初めて会った時より、ラフな服装の一秋だった。  トクンと心臓が小さく跳ねた。向こうが気付かない事を良いことに、その顔をマジマジと眺める。  整えられた眉、優しそうな少し切れ長の目、細い鼻筋、程よい厚みの唇、サラリと額に掛かる髪。  本当に良い男だ。と言うより、綺麗な男。  二週間も連絡せずに居た事が悔やまれた。  何だか、今更って感じ。 チラチラと一秋を観察していても、合コンのつまらなさは変わらない。  御手洗いにでも行って時間を潰そうと、バックを持って、店内奥の化粧室に向かう。  化粧室に行く為には、カウンター席の後ろを通らなくてはならない、連絡をしなかった変な後ろめたさから、一秋の背後を通る時に、ドキドキした。  化粧室で、大して崩れても居ないメイクを直し、外に出る。  化粧室の外にある洗面台で、時間稼ぎにもう一度手を洗っていた時、フッと周囲が暗くなり、背後に人が立った事が分かった。  ハンカチで急いで手を拭き、目線を手元から正面にある鏡に移す。  鏡の中で後ろの人物と目が合った。 「ねぇ、何で連絡くれないの?」  僅かに機嫌の悪そうな一秋だった。その瞳に囚われて、ドクドクと心臓が脈を打つ。 「忙しかったの。私、基本平日休みだし」  言い訳めいた言葉が口から出た。一秋は、眉間に皺を寄せ、拗ねたように言う。 「そのわりに、合コンしてんじゃん」 「そうね。数合わせで急に頼まれたのよ」  ふーん、と言ったまま、私の肩に手を載せて、私の身体を自分に向かわせると、腰を屈めてぴったりと目を合わせる。 「それじゃ、抜けれるよね? 既にひとり潰れてるみたいだし」  チラリと私達のテーブルに視線を走らせ、また私の目を捕らえる。  その仕草と言葉に、自分の魅力をちゃんと理解している事が分かった。  この男はマズイ! 脳は警鐘を鳴らすのに、私の口は言う事を聴かない。
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