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手を繋いだまま、聡子と竹ちゃんの背中を見ながら歩く。
私達の歩く速さが遅いのか、前を行く2人の歩く速さが早いのか、次第に距離が出来ている。
「離れたわね、追い付かなきゃ」
繋いだ手を引くと、一秋は立ち止まり、反対に引き寄せられる。空いていた手を私の肩に置くと、腰を屈め耳元で囁いた。
「このまま消えよ。2人で飲みに行こう」
「えっ、二72人に悪いわ」
一秋は、微かに笑うと、
「大丈夫、竹ちゃんが上手くやってくれるから。竹ちゃんには、最愛の彼女が居るからさ、襲う心配も無いしね」
もしかして、最初から話がついてる?
蜘蛛の糸に絡まった蝶の気分だ。一秋の瞳に囚われて、口を開く事もで来ない。
唖然とする私を連れて一秋は、ホテルの地下にあるバーに入った。そこで2時間程、2人で飲んだが、何を話していたのか覚えていない。熱に浮かされたように、一秋の瞳と声に漂っていた。
「そろそろ帰ろうか。そんなに飲んでなかったから、醒めたでしょう?」
私は、自分を保つ為に今のバーに入ってからアルコールを止めて、ソフトドリンクを口にしていた。だって、あのまま飲んでいたら、どんどん一秋に流されそうで怖かったんだ。
会計をさりげなく済ませていた一秋に、手を引かれ店を出て、車の停めてある駐車場に向かう。
「もう少し、酔い醒まそうか」
そう言った一秋に連れられ、入った事の無い小路に入る。
暫く歩くと、川沿いの道に出た。
あぁ、此処に繋がって居たんだと納得するが、その川沿いの道は、街灯が殆ど無く暗い為、夜の女1人歩きは危険な場所だ。
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