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 人気の無い暗い道を、一秋に繋がれた手だけを頼りに進む。  怖いような、そうじゃ無いような不思議な感覚に、胸がドキドキとする。  自然と口数も少なくなり、川の流の音だけが、やけに大きく聞こえた。 「どうした? 怖いの?」  見透かしたような一秋の言葉に、顔を上げると、唇に柔らかな熱を感じる。 「やっぱ、小さい・・・」  闇に溶けそうな呟きに、キスされたんだと分かった。  刹那に浮遊感を感じ、腰に廻された一秋の腕の力で、抱き上げられた事が分かる。  直ぐに片手が後頭部に回り、深く口付けされた。  翻弄され、溶けて行く意識の中で、既に一秋を好きになっている事に気が付く。  だけど、私は一秋の何を知っていると言うのだろう?  綺麗な顔と心地よい声、そして、今重ねられている少し乱暴で優しい唇しか知らない。出会って間もないのだから仕方がないのだけど・・・  ますます深さを増すそれに、完全に意識を持って行かれる前に、辿り着いた答えは、今から一つずつ知って行けば良い。  私の唇は、一秋のそれに答えていた。  どのくらいそうして居たのだろう、後頭部にあった一秋の手の力が緩み、唇にあった熱が離れた。 「愛理は、もう俺のだから」  離れた熱に寂しさを感じていた私の心を揺るがす声と共に、足が地面に着いた。  一秋は何も無かったように、また私の手を握り歩き出す。  駐車場に着き、助手席に乗り込んだ一秋の案内に従い、赤いツーリングワゴンは、夜の街を走る。
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