犬ごころ、飼い主ごころ

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    土曜日の昼下がり。 せっかくの休日だってのに、俺は犬のリードに引かれて歩いていた。 『もう、もっと速くお歩きになって。』 リードの先でそんなことを言うのは、黒と茶の混ざった毛色をしたロングコートチワワだ。 名前はリンダ。 可愛らしい服を着て、耳にはこれまた可愛らしいリボンを付けている。 見た目だけは可愛らしい犬だ。 『何ですの、その顔は。 あなたみたいな冴えない男性がわたくしと散歩できるなんて奇跡みたいなものなのですから、もっと喜んだらどうですの? そして、感謝するのです。 崇めるのです。』 よくしゃべるなぁ……。 「お前、可愛くねぇよ。」 『っ!?』 思いっきり目を見開くリンダ。 『か、かか、可愛くない!? このわたくしが!?』 「あぁ、そのお前が。」 『わたくしに死ねと言ってるのですか!?』 「どうしてそうなる。」 『可愛くないチワワは、存在する意味がありませんの!! だから、わたくしは可愛く、美しく……。』 「あぁ、もうわかったわかった。 可愛いし美しいよ。 崇めます。」 『心がこもっていませんわ!!』 俺、なにしてんだろ……。 思わずため息がこぼれた。
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