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ことの発端は昨日だ。
「お兄ちゃん、また、リンダちゃんお願いしていい?」
夜、二葉が俺の部屋にリンダを連れて来てそう言った。
「……また、か。」
というのも、リンダの飼い主である二葉の友達一家はかなりの旅行好きだそうで、旅行のたびに二葉にリンダのことを頼むんだ。
うちはペット禁制だし、二葉のやつも断ればいいものを……。
「だって、友達にお願いされたら断れないんだもん……。」
だそうだ。
ま、そこが二葉のいいところなんだけどさ……。
「はぁ、仕方ねぇな……。」
「ありがとう、お兄ちゃん!!」
二葉に頼まれると断れない。
俺も同じ、か。
「それじゃ、リンダちゃんのご飯とかはわたしが用意するから。
いつも通りお願いね。」
「はいよ。」
二葉が部屋を出ると、リンダは俺の顔を見てため息をついた。
『また、あなたと一緒に過ごさなければいけないんですの?』
「また、俺と一緒に過ごさなければいけないんですのよ。」
そう答えて、俺はベッドに置いてあったクッションをリンダに投げる。
「仕方ないだろ、二葉の部屋は鍵ないし。
バレたらお前、親父に殺されるぜ?」
『野蛮な父上様ですわね。』
リンダはクッションに座って言う。
こいつは床には座らないとかいう変なこだわりを持ってるからな。
他にも、市販の餌は食わないとか、用を足す時は見るなとか。
とにかくややこしいやつ。
『まぁ、お世話になるのですから贅沢は言えませんわね。』
「お、やけに物分かりいいじゃん。」
『淑女としてのたしなみですわ。
それで、オヤツのフルーツはまだですの?』
「………。」
俺、こいつ嫌い。
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