犬ごころ、飼い主ごころ

4/20
88人が本棚に入れています
本棚に追加
/336ページ
    俺がリンダを連れて来たのは、近所のドッグパークだ。 犬同士、飼い主同士でコミュニケーションをとるための憩いの場。 俺はこの場所が好きだったりする。 『みなさん、ごきげんよう。』 『おや、リンダさんじゃないですか。』 『久しぶり、リンダちゃん!!』 『相変わらず、いい服着てるなぁ。』 リンダを見て駆け寄って来る犬たち。 ダックス、ポメラニアン、パグにボルゾイ犬やドーベルマンまでいる。 こいつらみんな、俺とリンダの顔見知り。 「あら、リンダちゃんの飼い主さん? こんにちは。」 「相変わらず可愛らしいお洋服ですね。 リンダちゃんも幸せね。」 と、声をかけてくる飼い主のオバサン連中。 こいつらは、あんまり知らない。 というか、興味ない。 「こんにちは。 佐藤さんとこのドーベルマンは相変わらず、強そうですね。」 「あらやだ、私は木下よ。」 「あー、たしかダックスの。」 「違うわよ、うちの子はパグ。」 「すみません……。」 やっぱり、人間と話すのは苦手だ。 『あっはは、進一郎さんも相変わらずで。』 ボルゾイ犬のジャックが笑いながら言う。 「ジャックも相変わらず、イケメンじゃん。」      ボルゾイ犬のジャック。 ダックスのジョンタにポメラニアンのリリー。 パグのコタロウとドーベルマンのケルベロス。 人間より、こいつらと話してる方が楽でいい。
/336ページ

最初のコメントを投稿しよう!