犬ごころ、飼い主ごころ

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    俺がここに来るのが好きな理由、それは……。 『聞いてよ、うちのご主人の息子、この間わたしにキスしようとしてきたのよ。 いくら女に振られたからって、それはあんまりよね。』 『僕はいつもキスしてるよ? ご主人とだけど。』 『コタロウさん、それは……。』 『キモいですわね。』 『えぇ、みなさんしてないんですか!?』 『うちは下の子と一緒に寝てるけどね。 キスしようとしてきた息子はマジ噛みしてやるけど。』 『俺も美人と寝たいよ。』 『ケルさんと寝る勇気がある人がいるかどうか……。』 『どういう意味だ、ジョンタ。 答えようによっちゃ、噛み殺す。』 『そんな……。 ちょっと足が長いからって。』 『あぁ?』 『ひぃ!!』 『まぁまぁケルさん、落ち着いてくださいよ。 リンダさんはどうなんです?』 『一緒に、寝る……。』 『ん、どうしたの?』 『い、いえ……。 わ、わたくしはいつも高級ベッドで寝てますわよ。』 『高級ベッドかぁ……。 いいなぁ……』 『俺なんて外だぜ、外。 まぁ、ドーベルは番犬をするのが仕事なんだけどよ。』 『ふ、ふふん。 わたくしの飼い主様は愛にお金を惜しみませんから。』   『で、でも僕のご主人だって……』 延々と続く犬話。 こいつらの話、聞いてて飽きないんだよな。 人間のする話と違って、シュールですげえおもしろい。
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