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「探し犬。
見かけたら連絡を。」
紙にはその文と、チビの写真が印刷されていた。
「これ、お前の飼い主が書いたやつだろ。」
『…………。』
「探してんじゃねぇの?
お前のこと。」
『…………。』
「はぁ……。」
めんどくせぇなぁ……。
「お前、迷ってんだろ。
前の飼い主のところに戻るか、メグちゃんのところに行くか。」
『……うん。』
「情けねぇな。
それでもオスかよ。」
言って、俺はチビを下ろす。
「男だったら自分の身の振りくらいバシッと決めろよ。」
『……メグちゃんのところに行きたい。』
チビは少し考えてから、そう言った。
『前の家には、戻りたくない。
メグちゃんと一緒に暮らしたい!!』
「そうか……。
だったら、一芝居打つぞ。」
『え?』
「芝居だよ、芝居。
主役はお前だ。」
『そんなこと、出来るの?』
「出来る。
俺には知り合いが多いんだ。」
と言っても人間の知り合いじゃないけど……。
『バカみたい。
男って、嫌ですわ。』
「そう言うなよ、リンダ。
こいつにとっては一生共に過ごす家族なんだ。
引き合わせてやろうぜ。」
『……好きにすればいいですわ。』
呆れたように言って、リンダはそっぽを向く。
「好きにするさ。」
ペットってのは家族だ。
動物にとっても、飼い主にとっても大切な存在になる。
その大切さを俺は知ってる。
だから、俺はこいつを相応しい相手に巡り会わせてやろうって、柄にもなくそう思ったんだ。
我ながら、臭い台詞だ。
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