犬ごころ、飼い主ごころ

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    結局、チビはうちに連れて来た。 親父にバレたら間違いなく血の雨が降るな……。 「お前、絶対に鳴くなよ。 生きてメグちゃんに会いたかったらな。」 『う、うん……。』 『大袈裟ですわね。』 「バカ、お前だって無事じゃすまねぇぞ。 バラバラにされて豆腐にされる。」 『……アホらしいですわ。 そんなことをしたら、わたくしの飼い主様が黙っていませんの。』 自分が豆腐にされるかもしれないってのに、相変わらず高圧的な態度だな。 「そういえば、お前の飼い主ってどんな人? 金持ち?」 『大金持ちですわ。 わたくしのために高級品を惜しまず与えてくれますの。』 「へぇ。 愛されてんだな。」 『と、当然ですわ。 わたくしを愛さない人間なんて、いるはずないんですもの。』 「なんだそれ。」 『ぼ、僕も、そんな飼い主様に会えるかな……。』 と、チビが小さな声で言う。 「それはお前次第だな。」 『僕次第……。』 「まぁ、がんばれよ。 リンダみたいな金持ちの家に行くのは無理でも、しあわせにはなれる。」 『うん!!』 「バカ、声がデカい!!」 チビの口を塞ぎ、耳をすます。 親父が来る気配はない。 「はぁ……。 今日はもう寝るぞ。」 『うん……。』 『………。』 「どうした、リンダ。 まだ眠くないのか?」 『い、いえ。 早く電気を消してくださらない?』 「あー、悪い悪い。」 電気を消して、ベッドに入る。 明日は大変な日になりそうだ。
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