獣々見聞録

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    『進一郎、あれだ!!』 カラスが叫ぶ。 遠く、夕暮れの空に浮かぶ黒い固まり。 数十、いや、数百のカラスだ。 「え、あれ、お前のツレ?」 『あー、ツレのツレのツレのツレってとこかな?』 「友達多すぎだろ!!」 言って、さらにギアを上げる。 MAXスピードだ。 『うわ、うわうわ。』 「次、どっちだ!!」 『えっと、右だ右!! そこ曲がってすぐ!!』 言われた通りに曲がり角を曲がると、電線にとまるカラスの群れが見える。 『進一郎だ!!』 『おい、進一郎が来たぞ!!』 『急げ、こっちだ!!』 数羽のカラスが俺に続く。 『進一郎、有名人じゃん。』 「お前らにモテても嬉しくねぇっての……。」 頭上を飛ぶカラスの数が増えてきた。 そろそろか……。 そう思っていると。 『進一郎さん!!』 一羽のツバメが俺の横に並んで飛ぶ。 「お前、大丈夫なのか?」 『私は大丈夫です。 でも、巣が……。』 泣き出しそうな声で言うツバメ。 道の先に、ランドセルを背負った数人の子供が見えた。
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