獣々見聞録

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    タイヤを滑らせ、ガキどもの前に自転車を止める。 我ながらカッコいい登場の仕方だ。 「おい、お前らなにやってんの?」 見ると、ガキどもは両手に石を持っている。 巣に石でも投げてたんだろうな……。 「べ、別に何もしてねぇし!!」 「お前、誰だよ!!」 ウゼェ……。 ウゼェから、蹴った。 「うっ……。」 「け、健ちゃん!!」 「お、お前、大人のくせに子供にボーリョクなんて最低だな!!」 「うるせえよ。」 また健ちゃんを蹴る。 上空でカラスたちの歓声がおこる。 「な、なんで僕ばっかり蹴るんだよ!!」 「近いから。」 そう言ってもう一度健ちゃんを蹴ると、健ちゃんは泣いて逃げ出した。 「う、うわーん!!」 「健ちゃん!!」 「お、お前、覚えてろよ!! 先生に言いつけてやるからな!!」 ガキらしい捨て台詞を残し、ガキどもは走って逃げていった。 途端に、カラスたちが降りてくる。 『最高だぜ、進一郎!!』 『おい、あいつらの顔みたか!! 先生に言いつけてやる、だってよ!!』 『あいつらの家にフンしてやろうぜ!!』 『いいね、行こう行こう!!』 と、カラスたちの興味は俺からガキどもの家にフンをすることに移ったらしく、一斉に飛び立っていった。 「ったく……。」 義理固い奴らなのか、それともただのアホか……。 まぁ、後者だろうな。
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