獣々見聞録

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    カラスの群れが飛び立つと、辺りは一気に静まる。 残ったのは、俺と最初のカラスと、ツバメだけ。 「お前は、行かないでいいのか?」 『ん、俺はいいさ。 群れるのは好きじゃないんだ。』 「そうかよ。」 『あ、あの……。』 と、ツバメが俺の肩にとまる。 『本当にありがとうございました。』 「いいって、気にするな。 それより、巣は大丈夫なのか?」 『あっ!!』 俺が聞くと、ツバメは慌てて巣に向かう。 そしてしばらくすると、暗い顔でまた俺の肩にとまる。 『タマゴは大丈夫でしたけど……。』 「けど?」 『巣が……。』 言われて巣を見ると、尖った石が刺さっている。 あれじゃ子供が孵っても育てるのは難しいな……。 「石をなんとかしても、あいつらまた来るだろうしな……。 どこか別の場所に作り直すしかないな……。」 『そんな……。』 「大丈夫。 こいつらが手伝ってくれる。」 『まかせろ。』 羽を広げてカラスは言う。 かっこつけやがって……。 『いいんですか?』 「あぁ、巣が出来るまでタマゴは俺が預かっといてやるよ。」 『食うなよ?』 「食うかよ。 お前らじゃないんだから。」 『あ、あの、本当に何から何まで迷惑かけちゃって……。』 「………。」 俺は、申し訳なさそうに言うツバメの頭を人指し指で撫でてやる。 「お前が気にすることじゃねぇよ。 そもそもの原因は俺たち人間なんだから。」 そう、俺たち人間が悪いんだよ。
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