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半ば恭弥を強制的に引き連れて、魅織がやってきたのは英語教師に設けられた『英語準備室』。
魅織は、恭弥を中に入れ自分も入ると、誰も入ってこれないように内側から鍵をかけた。
「取り敢えず座りなさい。…………コーヒーでいい?」
「はい。構いません」
最初は自分の分だけ、と思っていた魅織も、流石にそこまでしたら大人げないと思ったのだろう。
恭弥の分までコーヒーを入れると、優雅に座っている恭弥の前にコーヒーを置いた。
恭弥は、そのコーヒーをゆっくり口に運んだ。
魅織は、少し砂糖を入れると、自分もそれを飲みながら恭弥を一瞥した。
そして、こうなってしまった原因を考える。
――――考えたところで答えなんて出る筈ず無いんだけどね。
魅織は、恭弥に気づかれないように小さくため息をついた。
しかし、恭弥がそんな魅織の様子を見逃すはずもなく。
「どうかしたんですか?」
「………どうかしたなんてもんじゃないのはよくわかってると思ってたわ。
全く。せっかく給料のいいところに入り込めたんだから、悠々自適に行こうと思ってたのに。
入った途端にこの様。自分が情けないわ」
そうして、今度は隠すことなくため息をつく。
恭弥は、そんな魅織の様子に苦笑する。
男と女が二人きりの状況で、しかも相手は生徒。
こんな状況がばれたほうが大問題になると、魅織はちょっとでも考えたのだろうか。
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