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気づかれないようにため息をつく。
至極面倒くさそうにしている魅織に、理事長は無言で返事を促す。
魅織は恭弥に目をやるが、こちらは優雅に紅茶を飲んでいた。
今度は隠しもせず、盛大にため息をついた。
「そんなバカげた話を理事長は信じているんですか?
私がこの子と?
そんなこと、あり得る筈がないでしょう」
どこまでも無気力な魅織に、恭弥はつまらなさそうな顔をする。
それにはさすがに腹が立ったのか、魅織は恭弥を見ながらぞんざいな口調で言う。
「あなたのせいでこんな面倒くさいことになったんだけど。
いつまでそうしているつもり?」
「………別に、俺がこんなに騒ぎを大きくしたんじゃないし。
てか、そんなにダメなんですか?」
傍らで聞いているだけになってしまった理事長は、事態が呑み込めずにいた。
まぁ、無理もない話だろう。
きっと、誰が聞いても話の内容の全てをつかむことはできない。
そんな理事長に、魅織はニコリともせずに呟く。
「理事長。今回のことはこの子と二人でゆっくり話したいんですけど、構いませんよね?」
そこには、有無を言わせぬ空気が漂っていた。
理事長が黙って頷くと、魅織はドアを開け恭弥に言う。
「少し、二人きりで話しましょうか」
「………分かりました」
そういうと、二人は理事長室から出て行った。
あとに残されたのは、状況を把握できていない理事長だけだった。
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