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その教室は、いつも以上に騒がしかった。
話題は勿論、魅織のことについてである。
「知ってる? 新しく来た英語教師」
「あたし朝見たよー。すっごいキレイな人だったー」
「私も見ました。あの人になら、教えてもらってもいいと思いましたね」
その騒がしい教室の中でただ一人、一人で読書にふけっている男子生徒が。
端整な顔立ちに、銀縁メガネの奥にのぞく瞳はどこか愁いを帯びていて、一部の女子生徒から絶大な支持を得ている。
―――今日はやけに騒がしいな。静かに本も読めない。
男子生徒がそう思ったところで一限目のチャイムが鳴り、ドアを開けて教師が入ってくる。
途端、教室中が水を打ったように静かになった。
訝しげに思った男子生徒が顔を上げると、そこには魅織が。
魅織を見た途端、心臓が早鐘を打ち、顔が熱くなるのが自分でも分かった。
「初めまして。今日から高等部1年の英語を担当することになりました、鬼堂院魅織と申します。
では早速ですが、机に置いている教材を全てしまって下さい。また、机の上には筆記用具と消しゴムだけにしてください」
いきなりで、言われたことを理解するまでに生徒たちは数秒を要した。
全員が用意したのを確認して、魅織はA4のプリントを配った。
「まだ表を見ないでください。全員に回りましたか?
じゃあ、30分で全て解いてください。始め」
魅織が配ったもの。
それは―――――
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