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英語のテストだった。
内容は、中学で習ったもの。誰でも解ける、簡単なものである。
「あの、先生? これは………」
「説明は後です。早く解いてくださいね」
魅織の微笑みが何か冷たいものを含んでいると感じたのは、きっと錯覚ではないだろう。
質問した生徒のほうは、呆然としていたが、これ以上質問しても答えてくれないことを悟ったのか、問題を解き始めた。
一方の魅織はというと、優雅に本を読んでいる。
30分後、回収した魅織は、まだ状況のつかめていない生徒に説明した。
「これは、今あなたたちがどれくらい英語ができるかを確認するために行いました。
ざっと見たところ、まぁまぁですね。
あなた達のことだから、もう少し残念な結果になっていると思いましたが、その心配は杞憂だったようですね」
そう言って微笑む魅織の目が、笑ってないことに気付いた生徒は居ないだろう。
ただ一人を除いては。
――――ヤベ~。ホレた。絶対俺のモンにしてやろう。
一人ほくそ笑むその男子生徒の視線に、魅織は気づくことができなかった――――
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