その1

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日々、動物に囲まれて、仕事しております。 出入り自由なうちの職場はたまに見学される方もちらほら。 その日は餌やりしに小屋の中に居たのですが、お孫さんを連れたお爺さんが色々説明していました。 『ほら、可愛いねぇ。これはうさぎだよ。』 4才くらいのお孫さんに話しかけておられました。そんな様子を裏からそっとみていたのですが、隣の小屋にいた孔雀を見て『あれは雉だよ、羽根がキレイだろう?メスよりもオスの方がキレイだからあれはオスの雉だと思う』 『おじいちゃんすごーい!』お孫さんに褒められては満足そうなお爺さん。 いや…お爺さん、あれは孔雀です。 小屋の前に札も何もないから仕方ないのかもしれないけれど、大きさ違うし! 心の中で葛藤していると、お爺さんから話しかけられました。 『この雉はオスだろう?』と。 悩んだのですが『すいません、孔雀なんです…』 暫しの沈黙のあと、お爺さんは『わ、わかっておる。ちと言い間違えただけじゃ、これが雉な訳ないじゃろう』 あの時の答えがあれでよかったのか今も考えてしまいます。
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