5/10
前へ
/319ページ
次へ
「ミシェル、おはよう。 連絡も迎えの車もありがとう」 にこやかなミシェルにつられて微笑むと、レイコニソックリ…と、ミシェルが笑った。 「病院、何時から面会出来るの?」 「9ジコロ、オッケーネ」 「了解…。ねえ…調べたんだけど、少し前じゃないの?ママが倒れたのって」 私の問いかけに、ビックリした顔のミシェル。 『……わかっちゃったか。 そうだよ。倒れたのは2週間前。今は、点滴治療をしてる。 今回のは、血栓を溶かす薬をカテーテルから注入したんだ』 真面目な顔のミシェルが、フランス語で話しだした。 だいたいは聞き取れる。 『何故、倒れた時に連絡くれなかったの? ママに口止めされたの?』 苦笑いを浮かべた彼は、頭を掻くと続けた。 『知らせたら別れるって言われてね。 本当に、軽い症状だったんだよ、最初は。 でも、左側にマヒが出始めて…心細くなったみたいだ』 『言葉は大丈夫なのよね?』 『ああ…大丈夫だよ。 点滴治療しながらリハビリもして、このままならマヒもかなり改善するだろうって』 『ミシェル、本当にありがとう』 連絡したら別れるってお母さんらしいけれど、不安でいっぱいだったであろう母を支えてくれたミシェル。 感謝してもしきれない。 『こちらこそ、来てくれてありがとう』 おだやかに微笑む彼は、とても嬉しそうだった。
/319ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1643人が本棚に入れています
本棚に追加