品定め

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 月がはっきりと見られる、ある晴れた冬の夜。すっかり雪化粧をした住宅街を通る、夜道の中、寒々とした空気に身体を震わせながら、一人の男が歩いていた。男は、白い吐息を吐きながら、そこの十字路から車のライトが灯ったりしないか、後ろから雪道を歩いたりする足音が聞こえたりしないか、そうやって、入念に周囲に人の気配がないか、その鋭い眼とか、まっかになった耳を働かせて探っていた。男はこの聖夜に、盗みを働こうと企んでいるのである。
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