男は女を愛した、女は男を……

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その時だ。 『妾わに触れるな』 空気が硝子のように震わす不思議な声が洩れた。 鼓膜と頭蓋を打ち、言葉はそのまま"力"になって暴漢の一人を吹き飛ばす。 男たちは呆然となった。 黒髪の娘は…いやその姿をしたものは昂然と頭を聳やかし、その場の男たちに冷たい視線を向ける。 『退きや下郎共』 女王が命ずるが如く女の声が響くと、男たちは波が返すように道を譲った。
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