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女は男を愛した、男は女を・・・。
「ほら見なよ」
髪の長い給仕女は言った。
客は何のことか見当もつかず、訝しげに女の顔を見る。
「アタシじゃなくて、あっち」
煽情的に胸を持ち上げるよう腕を組んでいたが、片手だけを解いて指差した。
そこには小さな舞台。
飾られた灯火を背に灰色の布を頭に巻き付けた男が座る。
客が仔細を見て取るより先に、灰色の男は楽器を取り出すと爪弾き始めた。
月琴が哀しむように弦を震わせ。
流れるような声が唇から漏れ…物語が編まれていく……。
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