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「ありゃ、隊長固まっちゃってるよ」
前方が止まっているので仕方なしに馬車を停めると部下の青年はひょいと顔を横に出した。
「どうにも重症だね〜?馬車も居るからおじさんあっちに移すのかな」
少し距離があるので具体的なやり取りまでは聞こえない。
部下が首を傾げた。
「いやいやお若いの。あれは貴人のお忍び用、しかも意匠からすると教会の物ですぞ」
渦中の人物はまったく他人事の体で部下の疑問に勝手に応える。
装飾のほとんどない質素な造りで頑丈そうなそれは窓も小さくとても乗り心地が良さそうでない。
「おじさん物知りだよねぇ」
窓が小さいのは狙撃に対する備え、小さな車体も1人乗りな事を考えれば充分な余裕があった。
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